アジア人留学生へ
新型肺炎関連のニュースで、先日「ローマのサンタ・チェチーリア音楽院のアジア人留学生がレッスン停止を言い渡された」という記事を読みました。渡航歴も関係なく「アジア人」とはなんと荒いくくり方でしょう。全く酷い話ですが、西洋には昔からアジア人差別があります。彼らからしてみれば中国人も日本人も区別がつきませんから、あり得るだろうなという感想です。
私自身も留学中、人並みに差別の洗礼を受けました。
電車に乗ったら「中国人がいる」と嫌そうな顔をされたり、バスを待っていたら「きいろ」と言われているのが聞こえてきたり、でもこれはましな方です。
中には、夜の郊外電車の中でスキンヘッドの集団に襲われたり、理由もなく頭を小突かれた、という事件もありました。小突かれた女子留学生は、その後しばらくは帽子をかぶって電車に乗っていました。外見でアジア人とわからないように。
特に怖かったのはスキンヘッドの人たちでした。旧東欧諸国においてスキンヘッドは、ネオナチなど排外主義的な思想を持つ人たちだと言われています。彼らの目つきは鋭く、ファッションとしてこれとわかる物を身につけていて、決まった場所に夜、集団で出没しました。よく騒ぎを起こすので普通のハンガリー人たちも避けていましたし、私たち外国人は特に近づかないように気をつけていました。
それでも嫌なことをしてくる人はほんの一握りです。
私にはたくさんのハンガリー人の友人ができて、本当に親切にしてもらいました。いつも私の分まで楽譜をコピーしてくれたイルドー、練習帰りに必ず送ってくれたジュジャ、本番の度に段取りを細かく教えてくれたエルジュー、未熟で余裕もなく粗相をしたことも多かったけど、全て許してもらいました。その許しの上に留学生活は成り立っていたと思います。
今留学をしている人たちは、避けられたり嫌な言葉を言われたり、いつも以上に辛いと思いますが、どうか気持ちを強く持って。心からのエールを送ります。