ハンガリー人の耳がとてもよかった理由

留学中の想い出話の続きです。

前回、留学中に通っていた混声合唱団のメンバーが、アマチュアながらとても上手だったことを書きました。

指揮者がリスト音楽院の教授だったこと、リストの卒業生も多く在籍している。とはいえ、半数以上は普通の人で構成されていました。ところが彼らの耳はとても良く、ハーモニーを作るのが上手でした。アマチュアなので入団時に選別はしていないのに、なぜこんなにレベルが高いのか、とても不思議でした。

実はハンガリーには、音楽に特化した教育を行う「音楽小学校」という学校があります。
そこでは毎日歌の授業が行われていて、幾つもの興味深い指導法を見ることができました。定番のわらべうたを使った授業もそうですが、イギリス発祥の「ハンドサイン」というものを使って歌っていました。これは音楽小学校のみならず、一般小学校の音楽の授業でも導入時期に行われる歌の指導法で、ハンガリーの音楽教育ではメジャーな指導法の1つでした。

ハンドサインの何が良いかと、五線譜が満足に読めない小学校1年生でも、視覚的に音を把握することができる点です。6〜7歳という年齢から音程や和音を意識できるので、大変良い耳が育ちます。他にもピアノを使わず音叉一本で歌を歌っていたりと、耳を使わないと付いていけない音楽の授業が展開されていました。彼らの耳がよいのは、こうした指導の積み重ねが理由だと思います。

時の流れと共にハンガリーの音楽教育も変化して、サッカー好きの現首相政権になってからはスポーツ分野にお金が流れています。学校教育の現場でも当然「体育」が重視されて、「音楽」の授業時間はどんどん減っています。世界的にも珍しい音楽公教育の機会が失われつつあるのは大変残念です。
追い風となるかどうか、2016年にはユネスコの無形文化遺産に「コダーイのコンセプトによる民俗音楽文化遺産の保護」が登録されました。状況が変わるきっかけになれば良いのですが、難しいようです。
Fecebookで合唱団メンバーと話をしていても、苛立ちや嘆きの声が多く聞かれます。

◎ソルフェージュ教室・ラソラ◎

千葉県柏市で音大受験準備レッスンをしています。

音楽教育

前の記事

合唱大国