自然に歌い出すのを待って4年

今回は音楽教師以外にとってはどうでもよい「歌いたがらない子にどうアプローチすべきか」という話です。

音楽の第一歩は「歌」、しかし中には声がうまく出てこない子もいます。

その少年もなかなか歌ってくれない子でしたが、先日ついに自分から歌い始めてくれました!

今日は(自分用のメモとして)その経緯を書き留めていきます。

出すとかすれる声

彼とピアノのレッスンをはじめたのは5歳。

よくお喋りもする元気な男の子で、お母さんからは「声が低くて、出そうとするとかすれる」と最初に聞いていました。

初回チェックでは同年齢の幼児より声域が4〜5度低く、上に行くほどかすれて苦しそうな喉声を出しました。

レッスンはいつも通りで、まず歌とリズムで遊んで、その後ピアノのお稽古という内容です。

大抵はこれで声域が拡がるものですが、その子は一年やっても変化が見られませんでした

遊びの時の声の出し方

以前もかすれ声の子どもが通ってきていたことがあります。

お母さんにヒヤリングすると、幼稚園で遊ぶ時に大声を出して声が枯れていることが多いとのこと。

私と声を出していても怒鳴り声を出すことがあり(怒っちゃいない、興奮してるだけ)、そういう時はすぐに「あぁ、喉がいたい、いたい、かわいそうな喉ちゃん」とかいって、やさしい声を出すように促しました。

さらに、「お稽古のお部屋ではやわらかい声をだそうね」と約束して、結果としてきれいな声が出せるようになりました。

ところで話を戻して、前述の少年はどうなったかというと、ヒヤリングでは『幼稚園で大声を出しているわけではない』とのこと。

それでは出し方を知らないのだなと判断し、喉声をやめて裏声を出すように促してみましたが、どうにも….できません

それどころか出ていた声域の声も出したがらなくなりました💦

こりゃまいった!😂

フリースタイルの譜読み

彼とはピアノ曲の譜読みも、声域が狭いが故にフリースタイルになりました。

最初は書いてある通りの高さで歌っていましたが、出ない音が沢山あるわけです。

じゃぁ歌わないでいいかってすぐに諦めてはいけません。

歌える声域に下げて譜読み、ただし音程はきちんと保つ(相対音感)、決まった音(E音)からお名前呼び(絶対音感)も並行して続けました。

歌える高さに下げることについては、今までも他の子でやってきたので、根付く自信がありました。

ただひとつ気をつけたことは、彼がピアノで音を出す時に私が横から歌うことでした。

「楽器を弾くというのは歌うことと同じだ」と思ってほしかったからです。

音階をちぎって大丈夫?

そうして3年目に入りました。

弾く曲の音域が拡がると共に耳も開放されてきましたが、声は相変わらず「真ん中のCからG」までしか出せず、裏声も出せません。

(声域を拡げるのに裏声が入り口になるので、大事なスキルなんですよね〜)

せめてオクターブくらいは歌えるようになってほしい😂

そこで大きな方向転換を、こうなったら上に歌うことを諦めて下へ声域を拡げよう!

*緑の線が私の生徒の平均声域、男児君の薄いオレンジの声域を拡げるのに、オレンジ色へとシフト。

音階を歌うのであれば「真ん中のC」から歌い出し、彼の声が出なくなるのがAからなので、そこから1オクターブ下へジャンプさせます。

音階の流れを途中でちぎって、「G↓A」を都合「短7度下げる」という暴挙!、これには抵抗感がありましたが、やってみた結果はしっかりオクターブ下で歌えました。

推測ですが、そこまでの2年で彼の中で音の階段が定まっていた(相対音感がついていた)ということだと思います。

*ちなみに「低いAから順番に歌うチョイスはなかったのか?」という点について。「AHCDEFGA」と歌うと短音階(しかも自然短音階)になります。これを最初に歌うのは少し違和感がありました。幼児の曲に多い長調を歌いたかったというのが理由です。

ある日自分から声が出た!

そうこうしているうちにあっという間に4年経ちました。

そしてついに先日、ピアノを弾く時に歌いながら音を拾うようになりました!

どういう声か気になりますよね?

小さい声で、少しズレていますがピアノの音に寄り添ったもので、音程もまぁまぁ合っているといった状態。そんな魔法のようにはいきませんからね。

それでもこれまでの経緯を思うと、自発的に声が出たことが大きな変化でした

これを持続させていくには何をすればよいか….

ますますレッスンに力が入る今日この頃です!

◎ソルフェージュ教室・ラソラ◎

千葉県柏市で音大受験準備レッスンをしています。