フーガの技法BWV1080
孤高の存在、アンドラーシュ・シフ
1970〜80年代にハンガリー出身の若きピアニストが、「三羽ガラス」と呼ばれていた時代がありました。
ストイックで純粋なラーンキ、多才で華やかなコチシュ、独自の知性と信念を貫くシフ。
コチシュは亡くなってしまいましたが、ラーンキとシフは今も現役です。
先日、そのシフのバッハを聴いてきました。
フーガの技法 BWV1080
難曲で知られる《フーガの技法 BWV1080》、その複雑さと緻密さゆえに軽々しく語れない作品です。
曲の予習をする時にまず不思議に思うのが、さまざまな形態で演奏された音源があることです。
これは特定の楽器指定がないことが理由で、実際の楽譜を見てみるのも面白いです。曲によってはSATB(ソプラノ・アルト・テノール・バス)の四段譜で書かれています。
最大の聴きどころが、いわゆる『未完のフーガ』に出てくる、B-A-C-Hの動機です。
あの動機が出てくるともう終わりが近い。一挙に緊張感が高まります。
そして突然「終わり」がやってきます。
今回のコンサートの肝は、演奏が終わった後に訪れた「静寂」でした。
その瞬間、2,000人の聴衆の誰一人として拍手をせず、シフが動き出すまで会場全体が深い沈黙を共有していました。
家で聴いているのならともかく、演奏会場でこれが味わえるとは。
会場を後にする時も静かな感動が続いていて、あの場に居た皆で作り上げた静寂の尊さを、感じずにはいられませんでした。

未完のフーガの自筆譜
出典:Wikimedia Commons / 所蔵:Berlin State Library, Germany (パブリックドメイン)
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千葉県柏市で音大受験準備レッスンをしています。
