ガーシュウィンの「サマータイム」を聴く

夏真っ盛り。モワッとした空気の中、「サマータイム」が聴きたくなりました。

オペラ『ポーギーとベス』の中の一曲で、ジャズのスタンダードナンバーとしても数えられます。

作曲にあたって

黒人霊歌には、第3・5・7音などを低めに歌ったり、音程をすべらせたりする「ブルー・ノート的」な表現があります。

ガーシュウィンは1920年代からジャズやブルース、アフリカ系アメリカ人の音楽文化に関心を持ち、作品に取り入れていました。

さらに1934年には、サウスカロライナ州フォリー・ビーチのアフリカ系アメリカ人コミュニティに滞在し、現地の音楽に触れています。

こうした体験は、ガーシュウィンの音楽的な探究を深め、『ポーギーとベス』の音楽をより豊かにするきっかけになったと考えられます。

オペラ『ポーギーとベス』あらすじ

舞台は1920年代。サウス・カロライナ州チャールストンにある黒人街「キャットフィッシュ・ロウ」。

足が不自由で物乞いをして暮らすポーギーは、美しいベスと出会い、二人は愛し合うようになります。

しかし、ベスの暴力的な元恋人や麻薬の誘惑に翻弄され、悲しい結末を迎える悲劇です。

『サマータイム』は子守唄

「サマータイム」は『ポーギーとベス』で最も知られたアリアで、劇中で3度歌われます。

第1幕ではクララが子守歌として歌い、第2幕でクララが再び歌い、第3幕ではベスが歌います。

ジャズやポップスなどで単独に取り上げられる「サマータイム」は、基本的に第1幕でクララが歌う形をもとにしたものです。

ジャズの語法を取り入れた独特の和音使いで、閉塞感とけだるさを見事に表現しています。

オープニング・アリア

オペラの冒頭で歌われる「Summertime」。主人公カップル(ポーギー&ベス)の隣人クララが、赤ちゃんをあやしながら子守唄「サマータイム」を歌います。穏やかで幸せな場面です。

 

他にもイイ曲がいっぱい

例えば「It Ain't Necessarily So」
ベスを誘惑する薬の売人が、「聖書に書かれている話が必ずしも真実とは限らない」と、すこし茶化して歌う曲です。メロディが非常に強く、一度聴くと忘れられなくなる曲です。

参考動画は、南アフリカを代表するオペラ団体「Cape Town Opera」が、2019年にドイツ・フランクフルトで行った公演だそうです。男性歌手Musa Ngqungwanaがとにかく素晴らしく、圧倒的な歌唱力と存在感で、会場全体の空気をつかんで魅せてくれます。

組曲『キャットフィッシュ・ロウ』

ガーシュウィン本人が、オペラの主要な音楽を抜粋・再構成した管弦楽作品です。

曲が始まってまず耳を引くのが、シロフォンの難所です。
続いて、オーケストラ作品では珍しいピアノ・ソロが登場。さらに、執拗に繰り返される同じリズムによって高揚感が徐々に高まり、やがて弦楽器が「サマータイム」の旋律を奏でます。

心が動く瞬間を探そう

どこか人を惑わせるような美しい音楽。聴いていてどんな感想を持ちましたか。

もしかして「ここが好き」「胸がぎゅっとなる」なんていう部分が見つかりませんでしたか?

そういう心が動く場所には、作曲家の工夫が隠されていることがあります。理由がわからなくとも、ぜひチェックしておいてください。

5年、10年経ってから「ああ、だからあそこが好きだったのか!」とわかることもあります。

それは、自分の音楽の聴き方が深くなった証でもあります。

そうやって昔の「好き」が少しずつわかっていくのは、とても嬉しい瞬間です。

『サマータイム』の編曲版

ハイフェッツ編曲のヴァイオリン版。実は伴奏が肝で、ピアニストによって「洒落てる!」にも「上手いけどなんだか平板」にもなってしまう編曲です。

武満徹のギター版。鈴木大介氏の演奏です。

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