バルトーク、そしてコダーイ(2)

コダーイはリスト音楽院を卒業したあとに、ハンガリー民謡についての博士論文を書き上げます。
その頃、最初に蓄音機を使って民謡のフィールドワークを始めていたヴィカール・ベーラに触発されて、自らも村々を歩き始めたのですが、同じように民謡に興味をもっていたバルトークと意気投合し、ふたりは互いに刺激しあいながらフィールドワークを進めていきます。

こうした彼らの行動には、数世紀に渡り他国に抑圧されてきたハンガリー特有の歴史を考えないわけにはいきません。

ハンガリーで居酒屋に行くと、酔っ払った男性たちの喋る定番が、「この国は昔はものすごく大きかったんだぞ!」という話です。今から1000年前、ハンガリーは広大な王国でした。
しかし、トルコやハプスブルグ家、ロシアなど、隣国に支配もしくは抑圧された状態を強いられ、領土もちりぢりに分割されてしまいます。その結果、様々な国の文化が入り混じることになり、「ハンガリー独自の文化」が薄れていきました。

コダーイとバルトークには、民俗音楽への強い興味の裏に「我々の文化を取り戻し継承しなくては」という熱い思いがあったようです。
それは自分達のアイデンティティの確認でもあったのでしょう。
日本のように海に囲まれた島国と違い、すぐ隣に別の民族がいる。
それがかわるがわる攻めてきて、知らない内に文化まで変えてしまう、耐え難いことだったのでしょう。

以下の写真は、バルトークがフィールドワークをしていた時のスナップです。
(左から4番目の男性がバルトークです)

この重そうな蓄音機を、持って移動していたのかと思うととても驚きます。また、こんな固い表情の農民たちを、得体の知れない機械の前に立たせることも大変だったろうと想像します。
バルトークが熱く語って説得した様子が目に浮かびます。

<Wikimedia Commons/File:Bartok recording folk music.jpg>

コダーイとバルトークが自らの足で集めた民俗音楽は、ハンガリーの音楽教育を大改革する素となり、またそれぞれの素晴らしい作品となり再生していくこととなります。

◎ソルフェージュ教室・ラソラ◎

千葉県柏市で音大受験準備レッスンをしています。