留学中に通っていた混声合唱団では、練習の他にも頻繁に本番があり、メンバーとは学校の友人以上によく顔を合わせました。音大卒業生が多く在籍しているとはいえ、そうではない普通の人も一緒に歌う合唱団です。ところが彼らはとても耳が良く、ハーモニーを作るのが上手でした。アマチュアなので入団時に選別はしていないのに、なぜこんなにレベルが高いのか不思議でした。

ハンガリーには子供たちの能力を伸ばそうとするシステムがあり、音楽に特化した教育を行う「音楽小学校」という学校があります。そこでは毎日歌の授業が行われていて、幾つもの興味深い手法が見られました。その中のひとつにイギリス発祥の「ハンドサイン」というものがあります。これは音楽小学校のみならず、一般小学校の音楽の授業でも導入時期に行われる歌の指導法だそうです。

ハンドサインを使うと、五線譜が満足に読めない小学校1年生でも、視覚的に音を把握することができます。6〜7歳という年齢から音程や和音を意識できるので、大変良い耳が育ちます。他にも音叉一本で歌を歌っていたりと、ともかく耳をよく使う音楽の授業が展開されていました。団員たちの耳がよいのは、こうした指導の積み重ねが理由ではないかと感じました。

時の流れと共にハンガリーの音楽教育も変容していて、サッカー好きの現首相政権になってからは、「音楽」の授業回数もぐっと減らされてしまいました。追い風となるかどうか、昨年の12月にはユネスコの無形文化遺産に「コダーイのコンセプトによる民俗音楽文化遺産の保護」が登録されました。これにより状況が変わるきっかけになるといいなと思いますが、難しいようです。合唱団メンバーと話をしていても苛立ちや嘆きの声が多く聞かれて、残念に思います。

◎ソルフェージュ教室・ラソラ◎

千葉県柏市で音大受験準備レッスンをしています。