音楽小学校(1)

ハンガリーには普通の小学校のほかに、『音楽小学校』という特別学校があります。
そこは公立小学校ですが入学時に簡単な試験があります。
入学すると、算数や理科など一般的な授業も行われますが、音楽の時間数が最も多くて、毎日「音楽(うた)」の授業があります。

私が見学に行った音楽小学校は、普通小学校の中に、学年に1クラスだけ『音楽小学校』のクラスがあるという形でした。
見学させてもらった1年生は、ソルフェージュ、民謡、歌、そして民俗ダンスの授業を受けていました。
ハンガリーといえば「合唱」で有名ですが、いつからやるかというと3年生からで、楽器のレッスンも3年生にはじまるとのことでした。

ここで気づいた方もいらっしゃると思います。
この『音楽小学校』の1・2年生は楽器に触らないのです。
日本人の感覚としては面白いなと思いました。

これはコダーイの考えに基づいてのカリキュラムなのですが、ハンガリーではまずソルフェージュ、そして楽器に触るという順番になっています。
実際、彼らが保育園時代から浴び続ける歌の量はとんでもなく多いです。
私の合唱団仲間には多くの保育士がいましたが、「保育士になるには200のわらべうたを暗記しなくてはならないのよ!」と言っていました。
それはつまり、保育園でそれだけの歌を使う、ということです。

『音楽小学校』にはもう1つの顔があり、午後になると普通小学校の子どもたちが通ってくる音楽教室になります。
よく幼稚園の教室で、放課後に音楽教室をやっているようなところがありますが、あれと同じようなものです。
希望すればソルフェージュの授業も受けられるので、そこでも専門教育が受けられます。

ところで、ここまで書いてきたことは以前のハンガリーの姿で、今はかなり変化してしまったことを書いておかないといけません。
現在の首相がサッカー好きで、政府が肩入れするのもスポーツ事業になってしまい、学校教育では音楽の時間数が減らされてしまいました。
また、多くの国と同じように、映画を媒体としてアメリカ文化が席巻してきて、人々の音楽の趣味も変わってきています。
考えようによっては、この世で変容しないものはないのですから、この次ハンガリーにいったらどんな教育になっているのか、興味深いところです。

◎ソルフェージュ教室・ラソラ◎

千葉県柏市で音大受験準備レッスンをしています。

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